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岐阜地方裁判所 平成8年(わ)562号 判決 1997年4月22日

本店所在地

岐阜県山県郡美山町谷合九七六番地の一

株式会社伊藤製材所

右代表者

伊藤純一

本籍

岐阜県山県郡美山町谷合一三三〇番地

住居

岐阜県山県郡美山町谷合九七六番地の一

会社役員

伊藤純一

昭和五年八月二七日生

右株式会社伊藤製材所及び伊藤純一に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官作原大成出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社伊藤製材所を罰金一八〇〇万円に、被告人伊藤純一を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人伊藤純一に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社伊藤製材所は、肩書地に本店を置き製板業等を目的とする資本金一〇〇〇万円(平成七年九月二五日以前の資本金は一〇〇万円)の株式会社であり、被告人伊藤純一は、被告人会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人伊藤は、被告人会社の業務に関し法人税を免れようと企て、架空仕入れを計上するなどの方法により、所得の一部を秘匿した上、

第一  平成三年八月一日から平成四年七月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が五六一〇万〇二八〇円であったにもかかわらず、平成四年九月三〇日、岐阜市千石町一丁目四番地所在の所轄岐阜北税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が九九〇万九〇一五円であり、これに対する法人税額は二六七万六三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告人会社の右事業年度における正規の法人税額一九九九万七九〇〇円と右申告税額との差額一七三二万一六〇〇円を免れ、

第二  平成四年八月一日から平成五年七月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が三七五二万七六一五円であったにもかかわらず、平成五年九月二九日、前記岐阜北税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が八五八万九〇八九円であり、これに対する法人税額は二一三万六二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告人会社の右事業年度における正規の法人税額一二九八万八〇〇〇円と右申告税額との差額一〇八五万一八〇〇円を免れ、

第三  平成五年八月一日から平成六年七月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が六一五八万〇五五九円であったにもかかわらず、平成六年九月三〇日、前記岐阜北税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が五八七万二二八五円であり、これに対する法人税額は一二一万三九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告人会社の右事業年度における正規の法人税額二一九〇万二三〇〇円と右申告税額との差額二〇六八万八四〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人会社代表者兼被告人伊藤純一の当公判廷における供述

一  被告人会社代表者兼被告人伊藤純一の検察官に対する供述調書二通(検乙12、13)

一  被告人会社代表者兼被告人伊藤純一の大蔵事務官に対する質問てん末書八通(検乙2ないし4、7ないし11)

一  被告人会社代表者兼被告人伊藤純一作成の上申書三通(検甲2、9、15)

一  田口晋也の検察官に対する供述調書(検甲8)

一  田口晋也(二通-検甲6、7)、伊藤道晴(検甲10)、伊藤島子(二通-検甲20、21)、篠田照子(検甲22)、大西美乃江(検甲23)、横山巌(検甲24)、長谷川文市(検甲26)、伊藤善治(検甲27)、及び伊藤徹(検甲28)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の査察官調査書五通(検甲1、5、12ないし14)

一  岐阜地方法務局高富出張所登記官作成の商業登記簿謄本(検乙14)

判示第一の事実について

一  岐阜北税務署長作成の証明書二通(検甲16、29)

判示第二の事実について

一  岐阜北税務署長作成の証明書二通(検甲17、30)

判示第三の事実について

一  岐阜北税務署長作成の証明書二通(検甲18、31)

(法令の適用)

被告人伊藤純一の判示各所為は各事業年度ごとに法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとし、被告人株式会社伊藤製材所については、各事業年度ごとに法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するところ、情状に鑑み同法一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により合算した金額の範囲内において罰金一八〇〇万円に処することとする。

(量刑の理由)

本件は、架空取引を計上する等の方法により所得の一部を秘匿して法人税の支払を免れたという事案である。

被告人伊藤は、昭和六一年ころに被告人会社の経営に行き詰まったものの、その建て直しに成功したが、この経験から、被告人会社の経営状態が悪化した場合に備えて裏資金を秘匿しようと考えるようになり、平成元年ころから取引先に協力を依頼して架空請求書や架空領収書を作成させて架空仕入れを装ったり、委託販売先に預けてあった在庫商品を期首及び期末商品棚卸高から除外したりして、虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、正規の法人税の支払を免れてきたものであり、長期間にわたる計画的な犯行といわざるを得ない。しかも、本件公訴事実記載のほ脱額が合計四八八六万一八〇〇円と極めて多額である上、ほ脱率も高い。また、ほ脱所得の使途も、被告人伊藤の商品先物取引や旅行費用に相当額が費消されており、酌量の余地がない。

以上の事情を考慮すると、被告人伊藤及び被告人会社の刑事責任は重いといわなければならない。

しかしながら、被告人伊藤は、本件の査察調査に素直に応じた上、本件公訴事実記載分はもとより、平成二年七月期分及び平成三年七月期分の修正申告もした上、納付すべき法人税や重加算税等を完納する等、本件を真摯に反省していることが認められること、被告人伊藤にはこれまで前科がないことなど、同被告人に有利に斟酌できる事情も認められるので、これら諸般の情状を総合考慮して、同被告人については、今回に限り刑の執行を猶予することとした。

よって、主文のとおり判決する。

(出席弁護人 建守 徹)

(求刑 被告人会社-罰金一八〇〇万円、被告人伊藤-懲役一年)

(裁判官 藤田昌宏)

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